廃墟

廃墟の歩き方 探索篇 廃墟の歩き方 探索篇
栗原 亨 (2002/05)
イーストプレス
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 廃墟と聞くと心霊スポットをすぐに連想するが、それは夜に入るからであって、探索する人は夜は足下が見えないし、危険なガラスの破片や危険な障害物があるので、昼間に行くようである。その時に撮る廃墟の写真はたしかに心霊スポットとしての恐さがあるが、なにかものがなしい気持ちが先に出てくる。
 先に行っておきたいことは、私は心霊的なものは非常に苦手であると言うことである。それでも廃墟に興味が惹かれる一つは、私たちが暮らす時間感覚がすごく早いんだなと強く実感出来るからである。廃墟はそれぞれ人的要因と立地環境の違いにもよるが、建物も生活感から思い出の断片もゆっくりと荒廃していく。まるで、その空間だけがまるで時間が止まったかのようにひっそりと静まり返っているのである。今の時間感覚が言ってしまえば、非自然的であることが実感できて、廃墟からゆっくりと流れる時間を大切にしなければと切に思ってしまう。
 廃墟に興味が惹かれるもう一つの理由は、手を加えるなどしない限り,建物に限らす全てのモノはやがて朽ちていくことが廃墟から理解出来る事である。人工物は自然によって朽ちて行く、私たちの
営みはその弱さを理解しながらも懸命に維持する努力よって成り立っている。そんな当たり前の事であるが、きっと私たちの時間感覚では忘れてしまうから、こういった廃墟を見ることで再確認する事は非常に大切ではないかと個人的にはそう思った。
 上掲にある本の紹介リンクは廃墟に興味を持つきっかけになった本で、島全てが廃墟の通称「軍艦島」、炭坑の廃墟で町民の生活空間に不思議と溶け込んでいる「志免炭坑鉱堅抗櫓跡」など全国の有名な廃墟の写真が載っているのでぜひ興味を持った方は読んでほしい。