S×S STORY:疑問過剰(前編)

 いつも、よかった頃を思い出しては今を嘆く。今をなぜか消化試合のような達観したかのような仙人の如き日々を過ごし、なぜか思い通りにならない自分に腹を立てている。なぜか、なぜか…

 深夜によく夕食を買いに自転車でコンビニに行く、夕方では駄目なんだ。不良連中がコンビニの入口付近でいつもたむろしている。

…いやだいやだ、なんでこの時間にいるんだ?地べたに座り、なぜ話しこむんだ?何を話しているんだ?俺の事じゃないだろうな?

……視線を向けるな、なぜ睨む?……私がなにをしたっていうんだ?

……いや、睨んでいない、たぶん視線だって向けてない。でも、なぜか、そうされた気分になる。
そういったことを考えているうちに、不良達は、仲間の車に乗り込みコンビニから立ち去った。

…よかった。本当によかった。
コンビニに入り、まず漫画雑誌を読む。面白い…私の唯一の楽しみかもしれない。読み始めると当初の目的である夕食の買い物を忘れ、長い時間そのまま過ごしてしまう。
読み終え時計を見ると一時間も経っていた。

 本の前で長居したせいか、なんだかトイレに行きたくなった。…そういえば本屋で長時間立ち読みするとトイレに無性にいきたくなる。なぜなんだろうか?…いやいや、考えるのはやめだやめ。
私はすぐに浮かぶ疑問を振払うかのようにトイレに駆け込み、便座に座った。

…用を終え、立ち上がった瞬間、突然左右に揺さぶられるような地震が起きた。そのときに上棚にあった大量のトイレットペーパーが棚の板ごと落ちてきた。私は恐くて、目を閉じ、頭を抱えてうずくまった。

しかし、いくら身構えても落ちてこない。トイレットペーパーだから気付かなかったのか?でも棚の板まで落ちてきたし、ちょうど当たらなかったのか?…いろいろ考えても仕方が無い。地震はまだ弱くなっているが続いている。もう目を開けて安全な広場に行ったほうがいい。そう思い、恐いながらもゆっくりと目を開けた。

……おかしい…絶対におかしい。私は自身を疑った。視界がまっしろなのだ。そのうえ、目を開けた瞬間に地震が収まったのだ。

 地べたでまじかにトイレットペーパーを見ているわけじゃない。目線を上げてもまっしろだった。…そうだ。ここがトイレだとすれば、手を伸ばせば壁を触れるはずだ。そう思って手を伸ばしたが、触れない。そんな。そんなことはない。私はまっすぐ立ち上がり手探りで歩こうとした。壁がある。まっすぐ歩けるはずが無い。

 私がどんなに信じて歩いても壁がなかった。いや違う、トイレがない、コンビニも道も家もなにもないんだ。そう確信した時、ふつふつとある頭から様々な言葉が湧いて出た。なぜ私が目を開けた瞬間に地震が止まったんだ?いや、それよりもなぜ、なんだこの白い視界は?トイレは?コンビニはどこなんだ?私は今どこにいるんだ?この状況は私だけが遭遇しているのか?…私?……私だけ?


 いやだ、やめてくれ、もう私は疑問を持ちたくない。静かに、……本当にただ静かに暮らしたいんだ。